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2005年12月20日 [長年日記] この日を編集

_ [game] この世の果てで恋を唄う少女YU-NO その1 不満点

総論

素晴らしい作品ですが、期待が大きかっただけに ゲームとしてみると「作業ゲー」の域を脱し切れていない点が非常に残念でした。

システムは非常にユニークなので、より熟成された作品がでてきて欲しいと思いました。

はじめに(言い訳)

あらかじめ断っておくと、まだ未クリアです。最後のシナリオ前です。

まだ謎解きを受けていませんし、内容には踏み込めません。

ただし、あらかじめある程度書くことはできるため、 先に(ゲームとしての)不満点を挙げておくことにします。 そのためには、このゲームについて説明することは避けられないでしょう・・・予想通り長文になりました。

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO [ja.wikipedia.org]

とは1996年末にエルフからPC-98 (古!) 向けに発売された18禁ADVゲームです。形式としては総当たり式の アドヴェンチャーゲームであり、画面内をクリックすることでコマンドを実行し選択肢を選んでいくゲームです。このような形式のゲームには慣れておらず正直、序盤は手こずりました。

YU-NO では独特のシステム A.D.M.Sによる新しい ADV ゲームを目指した挑戦が見られます。A.D.M.S の説明に入る前に大まかに、それまでの ADV ゲームについてふれます。

単純な ADV ゲーム

そもそも ADV ゲームでは、シナリオが何らかの形で分岐していくのですが、単純な ADV ゲームにおいては、選択肢を選ぶことでシナリオが分岐します。すなわち「選択肢」によって擬似的に物語を追体験していくのですが、残念ながら「ゲーム」としてみると「作業ゲー」という事になってしまいます。

木構造(チャート)で表現できるゲームのシナリオに対してプレーヤは順番に選択肢を選ぶことで(半ば機械的作業で)探索を行いその達成度を上げていく形式のゲームが一般的でした。ex.「かまいたちの夜

このような形式では必然的にゲーム性には乏しく、ただ根気のみを必要とし、プレーヤは記憶やメモやこまめなセーブを頼りに達成度を上げることになります。また、ゲームというよりは小説・映画といった受動的なメディアの延長上としてとらえる事は自然であり、「サウンドノベル」・「ヴィジュアルノベル」という名称も一般的です(正確には混同なのかな)。

A.D.M.S

では、歴史はこれぐらいにして、YU-NO に話を戻します。YU-NO においてプレーヤは(既に通過した部分とアイテムのある部分の)チャートを見ることができます。これが A.D.M.S の第1の特徴です。なにせ名称を訳すと「自動分岐マッピングシステム」ですから。

名称をみるとこのシステムしか無いように思われますが、実際にはもう1つの重要なシステムがあります。それは「宝玉」とよばれるアイテムです。この「宝玉」はチャート上のある地点に設置でき、後から主人公のもつアイテムをもったまま以前設置した地点まで移動することができるアイテムです。これを生かした形で他の分岐先で手に入れたアイテムを使用することで先に進めるようになるというギミックがシナリオの複数個所で用いられています。ただし、「宝玉」は設置するとプレーヤの手元から消え、再度その地点までシナリオを進めるか、「宝玉」を呼び出してその地点に戻らなければプレーヤの手元には戻ってきません。さらに、手元に宝玉が無くなると、チャートすら開けなくなりそれまでの ADV ゲーム同様の形態 になります。

また、この「宝玉」は全8個のうちゲーム開始時2つしか所持しておらず、シナリオを進む際に残りの6つを探し出すというゲーム内での目的にもなっています。このようなシステム A.D.M.S [ja.wikipedia.org] がYU-NO の(ゲームとしてみた)最大の特徴だといえます

システムを見た場合の不満点

支援機能まずは単純なもの(支援機能)からあげると* バックログがない* 既読スキップがないの2点が現在から見ると不満として上げられます。

ADV ゲームではその性質上、同一部分の繰り返しが要求されます。そのため、近年の ADV ゲームにおいて上記2機能は必ず搭載されているといってもいい機能です。

バックログは途中でセーブしていて後日再開する場合の補助、および、スキップしすぎた場合の救済措置。既読スキップは繰り返しの負荷を軽減するためのものです。ただし、これらはより作業感を強調しかね無いともいえるのですが・・・ないとやっぱり辛いです。残念ながら YU-NO においてはこれらの機能がないことでプレイ時間のいたずらな長時間化を招いています。

A.D.M.S

先ほどから「マップ」ではなく「チャート」という言葉を意図的に用いています。残念なことに YU-NO においてユーザが見られるのは分岐の枝分かれに過ぎず、過程をトレースすることはできません。あくまでも軌跡を見られるのみです。そのため、分岐のある地点がわかっても結局のところ総当たりによる分岐探索が多く見られました。それがシナリオ的に必然である場合(誰かを捜すなど)は良いのですが、偶然性の強いもの(特に初期の分岐)に関しては総当たりをせざるを得なく結局のところは「作業ゲー」の域を脱し切れていないように思えます。

「ある場所に赴いてある人と出会わなければ分岐しない」ことはわかるのですが、「その分岐がシナリオ後半にある場合」に「その手前に宝玉セーブがない」と結局どこに行くべきかがわかっても、そこに行くためには一度通った道を再度思い出して進まねばならず、既読スキップの助けもない事も重なって苦痛になりました。宝玉の使用回数制限と使い切ったときのペナルティがある以上、どうしても宝玉の使用は控えめになりトータルでの繰り返し回数は減っていないように思えます。場合によっては新たな発見もあるのですが・・・伏線は適当に自分で回収しちゃいますので(笑

後半になると宝玉も増え、慣れも手伝ってずいぶん楽になるのですが、システムに慣れていない序盤で苦戦してしまうとかなり辛いです。本当に手助けなしならば、投げ出していたかもしれせん。

せめて、「宝玉を使い切ってしまった場合の救済措置」と「チャートで(既に通過した)分岐における分岐条件の表示」ぐらいの補助が無ければ手間がかかりすぎます。プレイ時に誤って宝玉を使い切ってしまい、攻略サイトの助力を借りました。へたれです。

正直、普通にクリアする際にも攻略サイトを一切使用しないことはお勧めできません。(途中から既読スキップ代わりに使ってました)使わない方が良いという主張も十二分に理解できるのですが・・・手間が大きすぎます。へたれの言い訳ですね。でもへたれで良いです。

他ゲームとの比較

では、私のプレイしたことあるもので部分的に似たようなシステムを持つゲームと比較をしてみます。あまり本数をプレイしていないため、局所的な視点であることをあらかじめ断っておきます(街や EVE すらプレイしていない)。

逆転裁判

比較的単純な総当たり式&アイテム使用型 ADV ゲームです。基本的には一本道であるために繰り返しによる手間を避けています。謎解きといった部分に類似性が見られます。基本的な進め方はこんな感じ。

かまいたちの夜2

このゲームにおいてもチャートは視覚化されます。また、プレーヤはチャート上の好きな選択肢まで瞬時に移動することが可能です。ただし、アイテム等は存在しない純粋な「選択肢型」なため究極の補助機能が実装されているに過ぎません。そのため、逆に補助機能が作業感を増していた作業ゲーでした。シナリオは好みでしょうし触れません。

ひぐらしのなく頃に

表面上、選択肢の無い作品です。プレーヤはシナリオをただ読んでいくだけです。より正確にいいかえると(見えない)選択肢を(作品上の神である)作者があらかじめ選んでいる作品です。あえて表面上の選択肢を廃することで、逆にゲーム性が高まっている作品です。

プレーヤは主人公に移入し、提示された謎を解き明かすことになるのですが、(問題編に位置づけられる)シナリオ内では謎解きは行われず、(現時点において)以前その謎に対する解答は提示され切っていない状態です。

複数の「編」によって多角的な「可能性」が提示されることで、旧来のミステリ・ADV と異なった効果が生まれ、物語に深みを与えています。

「可能性」による深み、主人公に移入し外輪から徐々に核心に迫っていく手法においてYU-NO はこの面白さを先取っているといえます。

ただし、あらゆる「ゲームにしようというシステム」を廃し、ゲーム外にゲーム性の重要部分*1を持ち出したことで新たな「ゲーム性」が生まれており、これをADV ゲームの進化系というのは ADV ゲームの可能性を否定しているように思えます。

余談ですが、ひぐらしをリアルタイムに追いかけれたことは楽しくプレイする上で重要な要素だったのかなぁと思っています。

あの素晴らしい をもう一度

(タイトルは誤植ではありません)。恐らく非常にマイナーな元々 X68000 向けに作られたゲームです。発売は 1999 年であり後発ですが、YU-NO の影響を受けているのかどうかは定かではありません。ANOSとよばれる A.D.M.S に似たシステムを持っていることが特徴です。Windows 向けに移植もされており現在でもかろうじて入手可能です。

YU-NO の A.D.M.S ではプレーヤが受動的に「可能性」をただ与えられるのみならず、プレーヤの意志によって能動的に「可能性」を見つけ出す効果を狙っていたのでしょう。

このゲームもループする世界であり、ANOS ではアイテムではなく「記憶」を持ち運びすることが可能です。

通常のバックログは「読み返す」のみですが、ANOSにおいては「読み返した地点」まで戻ることができ、その地点で新たに獲得した「単語」を用いることで選択肢を増やしシナリオを進めていきます。A.D.M.S よりも大幅にユーザフレンドリでした。ただ、元々のシナリオ量もさほど多くなく、進めやすいシステムのためプレイ時間自体は短かったように思います。若干ボリュームに物足りなさを感じた記憶があります。

ゲーム性という視点では ANOSA.D.M.S より評価したいです。もちろん?トータルでは YU-NO を推しますが。

またまた余談ですが、このシステムを使用したゲームは同じ制作元から「空の浮動産」、「LOST COLORS」という2作品が出ており、中でも「あのすば」と「LOST COLORS」は割とおすすめです。音楽もなかなか良いです。

試行錯誤と作業の境界

ゲームが有限で閉じている以上、限られた範囲の「探索」になることを避けるすべはありません。ただし、謎を解くこと自体が目的となっていれば、その過程は「試行錯誤」ですが、謎が解けた後の状態を得ることが目的なら「作業」になってしまいます。

そのため、YU-NO において本来「攻略」の助けを借りることはゲームシステムそのものへの否定になりかねません。ただし、謎の本質以外の部分に割かれる時間が大きすぎたため、そちらの作業性に引きづられて全体として「作業ゲー」を脱せなかった感が否めません。

およそ10年前のゲームですが、十分に斬新さを感じることができました(正直、それってどうよ?)。それだけに、ゲームとしてみると非常に残念でなりません。

まとめ

不満点をだらだら書いてみましたが、本当に素晴らしい作品です。でなきゃ感想なんて書きません。

終了後、シナリオ・世界観などについて感想を書く「かも」。この文章も載せるかどうか若干悩みましたが載せてしまうことにします。俺乙。

*1 一人でああでもないこうでもないと悩んでみたり、たとえば掲示板で議論してみたり。

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